エシカル消費, 人間, 動物, 平和非暴力, 環境

第三回エシカルラボより

 

国際青年環境NGO A SEED JAPAN 事務局長の西島氏にお越しいただき、当法人の活動についてご講演いただいた。
その中でも近年取り組んでいる「Fair Finance Guide」というプロジェクトについてお話いただき、金融における「エシカル」に関する現状、課題、そしてわたしたち市民一人ひとりに何ができるかという具体的な提言も頂いた。
またご講義後の質疑応答のセッションでは、その社会性において他の先進国に後れを取る日本の金融機関の課題解決に向けてさまざまな意見が交わされた。そのなかで日本の金融機関に関する情報の少なさ、実態の不透明さも議題として挙げられ、まず課題を洗い出す必要性も強調された。

 

A SEED JAPANの活動

当法人はもともと、世界50か国80地域において国際会議で若者からの提言を行うなどの活動をしていた「A SEED(Action for Solidarity, Equality, Environment and Development)」という国際キャンペーンの日本支部であり、提言を行った1991年の地球サミット後に「A SEED JAPAN」としての活動を開始した。
当法人の運営方針は独特なもので、頻繁に代表や事務局長が入れ替わる。そのとき一番熱心なメンバーを代表として任命し、1~2年後には次世代にそのポジションを譲り、次の代表のサポートに回る。そうすることで当法人のミッション達成に貢献する人材を積極的に育成することができる。

当法人のミッションは「より持続可能で公正な社会を目指す」ことであり、そのために国境を越えた環境問題とその中に含まれる社会的な不公正に注目している。
環境問題というものは単なる事象に過ぎず、それが発生する根本には経済や社会構造の問題が潜在していると考えるからだ。また、当法人の支援がない状態になっても状況がもとに戻らないように、規範や法規制まで取り組むなど、長期的視野を持つことも大切にしている。

前述の通り、1991年の地球サミットを契機に日本での活動が始まり、日本において若者の声を社会に向けて発信することを目的に活動していた。
800人以上の若者が原発やフェアトレードなど様々な分野に関して提言を行い、企業に対しては発展途上国の搾取をしないよう求めるデモなども行った。
1995年からは青年環境団体としての活動も開始した。最初はゴミ拾いをするだけであったがこの問題に関しても「根本解決」が必要であると考え、ごみ箱やイベント会場のシステム自体を改善するなど活動の範囲が広がっていき、近年の更なる事業拡大に伴い別団体として独立するに至るまで成長した。

2008年には、現在の活動にもつながる「加害者としての消費者」としても活動を開始した。
その活動のうちのひとつとして、野外イベントに出店した際に来場者から不要になった携帯電話(当時はガラパゴス携帯)を回収し、個人情報を保護するための処理をした後はエシカルなリサイクルを行う企業に鉱物の回収を委託した。
そしてそこから得た収益をコンゴのゴリラの保護基金へ寄付するという内容である。この活動を通じて、携帯電話ができるまでの原料の採掘や流通、製造がどのような環境影響、社会的影響を及ぼすのかということを発信することが目的であった。
近年では「紛争鉱物」という言葉の認知度も上がりつつあるが当時はほとんどの人が知らず、その生産過程において起こる生態系破壊や資源搾取による内紛、反政府組織の関与など、伝えるべき問題が山積であった。
現在も課題は残るが、鉱物リサイクルについては、当法人も提言を行った「小型家電リサイクル法」が制定されたことによって鉱物の回収を企業が責任を持って行うことが求められるようになった。

また「消費者としての活動」として、生物多様性条約の批准をきっかけに、遺伝子資源の保護に関する企業に対しての働きかけや、法規制に対する提言を行ったこともある。
製薬のために資源が豊富な発展途上地域から搾取し、先住民の生活をも脅かす企業活動に対する問題意識が活動のきっかけであった。

 

エシカルな金融をめざす「Fair Finance Guide」

このように当法人は多岐にわたる活動を行ってきたが、すべてに共通して、経済や社会の構造を変えるプロジェクトに着手してきた。
そして現在はその軸をもとに、「お金、エネルギー、もの」という私たちが身近に触れるものを取り巻く社会問題に関するプロジェクトが稼働している。そしてそれらの進行中のプロジェクトのひとつに、本日取り上げる「Fair Finance Guide」がある。

当ガイドは各金融機関の社会性に関する「通信簿」を公開するプロジェクトであり、2014年に日本版ウェブサイトが作成された。
それぞれの金融機関は17のテーマで評価され、10点満点で採点された点数によってその機関の「社会性の高さ(エシカル度)」が一目で分かるように公開されている。
このプロジェクトの始まりは、当法人がエシカルな金融を促進するために行っていた「エコ貯金プロジェクト(2003~)」に共感したオランダのNGOから声を掛けられたことがきっかけであった。
それ以来規模が拡大し、世界の金融関係の団体だけではなく、金融以外の、たとえばグリーンコンシューマーや開発、人権問題を専門に取り扱うNGOなど多岐にわたる分野の団体が参画している。

そもそもなぜ、銀行の社会性を問う必要があるのか。
それは、一般に認識されている以上に銀行が社会に与える影響力は大きく、銀行の企業活動が私たちの暮らしや環境問題に大きく影響するからである。
さらに他の先進諸国に比較して日本人は預貯金を好む傾向があり、2017年には1,000兆円を超えた預貯金の使われ方が経済社会の潮流を形成する構造となっている。
その中でもメガバンクの影響は特に強く、顧客から預かった莫大な資金で行われる投資や融資は社会に大きな影響を与える。

その出資の中には例えば、気候変動対策において抑制が求められる石炭火力発電への巨額融資も見られる。
昨年の調査では、日本の大手民間銀行による石炭火力発電事業に対する融資額が約6,200億円に上ることが判明した。
世界的に見ても特に石炭火力発電についての反発は強く、たとえばインドネシアでは発電施設に対する地元住民による訴訟が起きている。
施設建設のために土地を奪われ、事業による環境負荷で漁業などの職を奪われた人々による反発である。
このような地域住民が反発するケースの中には、彼らのような反対勢力を暴力で制圧する組織が介入する場合もあり、地域コミュニティが崩壊する事例もある。

このような社会性が問われる事業に対する融資は、近年世界的に盛り上がりを見せる「ESG投資」の流れにも逆行する形となっている。
それにもかかわらず私たち国民一人ひとりから集まる預貯金は石炭火力発電だけでなく、様々な事業に投資・融資されている。
当法人の調査では、石炭火力発電事業を含む化石燃料関連企業に約15兆円、地元住民に対する強制立ち退き勧告や不法逮捕を伴う人道侵害関連企業に約1.4兆円、遺伝子組み換え関連企業に約1.8兆円、さらには核兵器やクラスター爆弾などの非人道兵器に対して約7兆円の出資が行われているという結果が得られた。
まだまだ「儲かるから」出資されているという現状が明らかになった。

 

消費者としてできること

ではこのような現状があるなかで、私たち預金者は何ができるのだろうか。
それは、利便性や健全性など、一般的に銀行を選ぶ基準となっている項目に加えて、各銀行の「社会性」を判断基準に加えるということである。
しかし個々人が銀行の社会性を評価し比較することは難しく、そこでその課題を克服することを目的として「Fair Finance Guide」が作成された。
当ガイドを使用することで預金者がどの銀行が「環境・社会に悪い企業に投資しない」という投資方針を掲げているのかを知り、利用先を選ぶことができる。
銀行は利用者や当法人による指摘で投融資方針を改善し、社会問題をめぐる金融の流れが変わる。このような好循環をつくることが当ガイドの目的である。

 

「Fair Finance Guide」の特徴

当ガイドの運営においては、銀行との「対話」の機会をつくることを大切にしている。
こちら側が一方的に評価・公開するのではなく、作成した「通信簿」を一度企業に送り、なぜその結果なのか、どのような基準で評価されたのかなどを対面で話す機会を設け、銀行側も確認した結果を公開している。
その評価方法についても当法人の主観ではなく、様々な国際基準を参照した上でルールを策定している。主に国連が推奨する国際的なルールを採用しており、それによって定めた17の項目についての評価を行っている。例えば「気候変動」、「人権」といった項目があり、銀行の投融資先の企業がどれだけその基準を満たしているかが評価される。
ただし、基準を満たしているという回答をするだけでなく、その具体的な内容の情報公開が条件である。
この通信簿を継続して作成する中で、銀行側から「どうやったら点数があがるのか」という相談を受ける場合もあり、企業側の関心の高まりも感じる。

 

金融機関は変わっているのか

一方で各銀行のスコアを国際的に比較すると、日本は他の先進国に対して後れを取っている。
これは投融資に関する実際の社会性の低さに加えて、日本企業の各項目に関する公開された情報量の少なさも関係していると考えられる。
全く情報公開のない項目の加点はゼロになるため、実態がどのような状況でもスコアが低くなってしまう場合がある。
また当ガイドでは預金者からの個別メッセージを銀行に送ることができる仕組みがあり、ウェブサイトの開設以来900通のメッセージを銀行へ送信してきたが、他国に比べるとまだまだメッセージの数は多くない。これらの預金者からのメッセージを真摯に受け止める銀行は多いので、ぜひこの仕組みを利用して頂きたい。利用者からのメッセージ、社会からの要求で銀行を変えることができる。

実際にFair Finance Guideを作成して以来、この5年間で金融機関は変わってきていると実感している。
たとえば環境・社会に配慮した投融資の国際ルールのひとつである「赤道原則」に署名した企業は国内トップのスコアを取得し、他にも各銀行が投融資方針を具体的に改善し始めている。最近では特に気候変動分野において各金融機関による改善の動きが目立ち、2017年末から現在にかけて、主要バンクは次々と化石燃料関連事業に関する改善方針などを打ち出している。
このような動きから、日本においても徐々に各機関がそれらの事業のリスクを認識し、危機感を持ち始めているということが窺える。

メガバンクへの預金以外にもオプションはある

さいごに、銀行へ預金をするほかにも、中央労働金庫やNPOバンク、マイクロファイナンスへの出資、長期投資など、個人のニーズに合わせた様々な資金運用の選択肢もある。
投資を通じて地域社会の活性化に貢献することや、社会性の高い企業を直接応援することもできる。
一般的な投資においてはリターンの大きさなどが重要視される傾向にあるが、それだけではなく、投資や預金をする際は自分が託した資金がどこでどのように使われ、私たちの生活にどのようにして影響するのかという想像を働かせることが重要ではないだろうか。

 

 

 

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